Untitled 2024-04-01 (2)

その後、都会へ戻った俺はすぐさま住んでいたマンションを引き払い、八ツ木坂へと再び向かった。 里夏ちゃんの両親の援助もあり、話はとんとん拍子に進んでいった。紹介された村の空き家を破格の値段で購入し、里夏を内縁の妻として迎え入れた。 法はまだ俺たちの結婚を許してくれないけど、彼女が結婚できる年齢になったら正式に籍を入れる予定だ。 移住を決意した俺を村の人たちは大いに歓迎してくれた。新たな村の一員と二人の結婚を祝して、村総出の祝宴が催された。夜を徹して行われた宴会の後、新居に戻った俺たちは昼過ぎまで寝過ごし、それから夜まで深く愛しあった。 それからもう、半年以上が過ぎようとしている。身ごもった後も教師やクラスメイトが積極的にサポートしてくれたおかげで、大きな問題もなくここまでやってくることができた。 「あ。いま、お腹の中で赤ちゃんが動きましたよ」 「そっか。元気で成長しているようで何よりだな」 すっかり大きくなったお腹を、里香が愛おしそうに撫でる。 来月の末には里香も臨月を迎えるだろう。そうすれば俺も晴れて一児の父親だ。 ことほぎ荘に泊まって、本当によかった。俺は心の底からそう思っていた。