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雨音に包まれて (1)

2024年07月08日 14時31分
対象年齢:R18
スタイル:イラスト

「こんにちわ」 降りしきる雨の中。駅前の公園に設置された東家(あずまや)で黄昏れていたところ、突然声をかけられた。 白いブラウスに、紺色の釣りスカート。淡い栗色の髪を肩より少し短めにカットして、小ぶりな丸眼鏡をかけている……そんな少女だ。 梅雨に入ってからというものの、連日のように降るゲリラ豪雨に、俺はほとほと嫌気がさしていた。 新しく始めたバイト先の店長は典型的なパワハラ気質で、今日はもうバックれてやろうかと考えていたところだったので、思わず面食らってしまう。 「お兄さんも雨宿りですか? 急に降ってきましたもんね」 「あー、うん。まあ、そんなとこ」 適当に会話を合わせると、少女ははにかむようにして微笑む。 歳は十一、二ぐらいか。恐らく、近所の学校に通っている子なのだろう。少しアンニュイな雰囲気がするのは、こんな天気のせいだろうか。 雨でびしょ濡れになっていたので、見かねてタオルを貸すと、妙に懐かれてしまった。少女は彩羽と名乗り、しばらくの間、他愛のない会話をしていたけど、雨は一向に止む気配がない。 「そろそろ、帰ったほうがいいんじゃないかな。折り畳み傘があるから、持っていきなよ」 「有川さんは、どうするんですか?」 「言ったろ、バイトをサボったって。明日はどうせ二限からだし、もう少し時間を潰してから行くよ」 「それなら、わたしも……」 「彩羽ちゃんはまだ小学生だろ。親だって心配するだろうし、早く帰ったほうがいい」 彩羽ちゃんはここに残ると言ったけど、もうじき日も暮れる。強めの口調で帰るように促すと、彩羽ちゃんは躊躇いがちにこう答えた。 「……わかりました。でも、せめてまた後日お礼をさせてください。お借りした傘も、ちゃんと返しますから」 「いいよ、そこまでしなくて」 「それじゃ、わたしの気が収まりません。……それに、父や母からも、他人の親切を無碍にしてはいけないと教わりました」 「彩羽ちゃんは、いいご両親を持ったんだね」 「……とにかくわたし、ここで待ってますから。有川さんも、ちゃんと来てくださいね?」 「ちょ、ちょっと待てって……!」 呼びかける声には足を止めず、彩羽ちゃんはそのまま公園の出口へ駆けていく。 「……バカバカしい。何を期待してるんだ、俺は」 感傷を振り払うように呟いた独りごとが、ホワイトノイズの中に溶けて消えた。 ――雨は、まだ降りやまない。 本編はこちらから。(小説、R-18) https://www.aipictors.com/works/412538/

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ネットの片隅に生きる、なんちゃって物書きもどき。自作小説の表紙や挿絵をAI生成してます。画像生成はNAIを使用。主にPixivに生息。

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