thumbnailthumbnail-0thumbnail-1thumbnail-2

1 / 3

その蓋を開けるな

2024年11月13日 15時00分
使用モデル名:ProfiteroleMix
対象年齢:全年齢
スタイル:イラスト
デイリー入賞 116
参加お題:

「早渚君、幽魅君と一緒に今から言う場所まで来てくれないかい?」 休日の朝、いきなり江楠さんから電話連絡があって呼び出されました。幽魅が見つかるかはちょっと不安でしたが、よく見たら私のベッドの下から腕が出ていて、覗き込んだら斧を手にして眠りこける幽魅を見つけられました。多分、玄葉の配信を見るかなんかして知った都市伝説の真似事をして私を驚かそうとしてそのまま寝てしまったのでしょう。おマヌケで可愛らしいな。 「幽魅、幽魅。起きて」 「ん~、凪くん・・・?おはぁよぉ~」 欠伸をしながらずるずると這いずって出てきました。そのままベッドすり抜けて立ち上がれば早いのに・・・。 「・・・!?あっ、ばれちゃってるじゃん!凪くんをびっくりさせたかったのに!オーノー!」 「はいはい、斧だけにね。面白いね」 「扱いが雑ぅー!」 江楠さんが呼んでいるとなればあんまり時間がありません。遅くなれば後で何を言われるか分かったものではないので、私は幽魅に事情を説明してさっそく指定の住所へ向かいました。 「やぁやぁ、よく来たねェ。おはよう早渚君、それと幽魅君」 「おはようございます江楠さん。それで用事は何ですか?」 江楠さんが指定してきたのは貸しオフィスでした。恐らくここを江楠さんの出張拠点として使っているのでしょう。 「これだよこれ。この段ボール箱さ」 オフィスの中には、大きめサイズの段ボール箱が置かれていました。 「昨日の夜の内に置き配されたようでねェ。幽魅君を連れてきてもらったのは他でもない、この箱を開けないように中身を見て欲しいのさ」 「開けないようにって・・・」 なぜだろう、と思いながらも、幽魅に中を見てもらいます。 「えーとねぇ・・・なんかごちゃごちゃコードがついた板と、トイレットペーパーの芯みたいなのが束ねてあるのが入ってるよ」 幽魅が言った通りの表現で、私は江楠さんに伝言していきます。 「ふぅん。箱の内壁にコードが貼ってあったりは?」 「しないねぇ」 「ないそうですよ」 「となると光センサー式かな。大体分かったよ、ありがとう。処理に回しておく」 江楠さんがスマホで誰かに連絡すると、ほどなくして防護服に身を包んだ人たちが現れ、段ボール箱を分厚いコンテナに慎重に収めて回収していきました。私たちはその間オフィスの外で江楠さんと雑談しながら待っていたのですが、回収が終わったのでオフィスに再び入れてもらいました。 「・・・それで、あの箱なんだったんですか」 「何だい、勘が悪いねェ。爆弾だよ爆弾。開けたらセンサーが反応してドカーン!って奴さ。幽魅君の話を聞いた限りじゃ何のひねりも無いダイナマイト採用型じゃないかい?」 爆弾!?私たちはそんなものがあるところに呼ばれたのか! 「言っておくがね、爆弾だって確証は無かったんだよ。だから幽魅君に確かめてもらったんじゃないか。幽霊なら物理的な影響なく箱の中を見れると思ってねェ」 「ひゃー、爆弾だったんだあれ。凪くんは見た事無いの?」 あってたまるか。ここは日本なんだぞ。一般人がほいほい目にするようなものじゃない。 「まあ警察に回収させたから、ほどなくして仕掛けた奴の痕跡が出るだろう。そしたら私が報復に動けばいい」 「人を脅迫するから命を狙われるのでは?いい加減足を洗った方がいいと思いますけど」 私はまっとうな意見を述べたつもりでしたが、江楠さんに鼻で笑われました。 「今更足を洗ったところで脅された人間が許すわけないだろう。それに私の命を狙うのは少数派だよ。私が毎日アクセスしているサーバーがあってねェ、そこに私のアクセスが二日以上ない場合、保存されているデータがマスコミやSNSに流れるようになっている。データというのは脅しに使っているネタだ。つまり私が重体または死に陥れば、破滅するのは脅されてる側も一緒さ。地位のある奴ほど私には手が出せないって寸法さ」 やっぱり悪魔だこの人。と、オフィスの玄関ドアが開いて誰か入ってきました。 「ちょっと、何なの急に呼び出して。今日は先輩とデートだったのに」 「あれ、シリアちゃん」 見るからに機嫌の悪そうなシリアちゃんでした。今にもあの大鎌を取り出しそうなくらいむくれています。 「悪いねェ。これから一仕事君に頼む事になりそうだったんで呼んだんだ」 「確定してから呼んで欲しいんだけど」 先輩とのデートがつぶれて相当不機嫌だな・・・と、幽魅が私の肩をぎゅっと握りました。振り返ってみると、幽魅が真っ青な顔でシリアちゃんを凝視しています。 「か、幽魅?どうしたの」 「あ・・・あああ・・・」 これは・・・怯えているのか?幽魅は頭を抱えてしゃがみこんでしまいました。 「幽魅、どうしたのそんなに怯えて」 「・・・ちっ、しまった私とした事が。シリア君、ちょっと君向かいのカフェで時間をつぶしてきたまえ」 「はぁー!?呼んでおいて何その言いぐさ!」 「いいから行け!」 江楠さんが珍しく声を荒げます。シリアちゃんはその勢いに押されたのか、おずおずとオフィスを出ていきました。 「すまない早渚君。私の配慮が足りなかった。私には見えないが、幽魅君が怯えているんだね?」 「ええと・・・何が、どういう事です?」 私にはさっぱり状況が分かりません。ただ、シリアちゃんがいなくなった事で幽魅は少し落ち着いてきたようです。まだ恐る恐る周囲を窺っているようではありましたが。 「シリア君の容姿がね、『学生時代に幽魅君をいじめていた同級生』によく似ているんだ。それで、記憶がなくてもトラウマを刺激されているんじゃないかと思う」 「えっ、いじめ・・・ですか?」 そんな話、今まで聞いた事無かったけれど。 「ああー、調査結果からは省いたねェ。ほら、流石に学生時代の話は幽魅君の地元の方での話だからここの町とは関係ないと思ったし」 何だか、取り繕ったような話ですが、実際幽魅が訳も分からずおびえているのは事実です。 「だからなるべくシリア君と幽魅君がかち合わないようにしていたのだが、今日はうっかりしていた。爆弾の件の謝礼も兼ねて渡そう、これでおいしいお供えでも買ってやってくれ」 江楠さんが何枚かの万札を取り出して私の手に握らせます。受け取れないと言おうと思いましたが、江楠さんの顔に『これを持って早くここを立ち去って欲しい』と書いてあるように思えて、私は幽魅を連れてオフィスを後にしました。しばらく歩くうちに、幽魅は元の調子に戻っていきました。 「本当に、なんでか分からないけどあの子がすごく怖かった。私幽霊なのに、何かもう『殺される』って思っちゃうくらいに」 「江楠さんの話が本当なら、それくらいひどくいじめられてたのかもね」 とりあえず、私も幽魅とシリアちゃんが会わないように気を付けるようにしよう。幽魅の記憶の蓋が開かないように。

コメント (8)

うろんうろん -uron uron-
2024年11月14日 13時46分

早渚 凪

2024年11月14日 14時55分

白雀(White sparrow)
2024年11月14日 12時50分

早渚 凪

2024年11月14日 13時05分

ucchie2772
2024年11月14日 10時04分

早渚 凪

2024年11月14日 13時05分

ルノハ
2024年11月14日 04時00分

早渚 凪

2024年11月14日 13時05分

ぜんざい

むむむ、単純な死の匂いだけじゃなくてトラウマだったのね

2024年11月14日 00時19分

早渚 凪

記憶が無くても、自分の命を奪った相手を無意識に察知してしまったのかも・・・。真姫奈が言い出した「いじめ」の件は、「シリアが幽魅を手にかけた」事を誤魔化すための咄嗟の嘘ですから、幽魅がシリアにトラウマを覚えるとすれば、その原因は最期の瞬間しかないんです・・・

2024年11月14日 13時05分

トカゲゲゲ
2024年11月13日 21時11分

早渚 凪

2024年11月13日 21時36分

Jutaro009
2024年11月13日 20時57分

早渚 凪

2024年11月13日 21時36分

五月雨
2024年11月13日 15時30分

早渚 凪

2024年11月13日 15時42分

56

フォロワー

2024年7月よりAIイラスト生成を始めた初心者です。 全年齢~R15を中心に投稿します。現在はサイト内生成のみでイラスト生成を行っていますので、基本的にR18作品はほぼ投稿しません。※運営様によってR18に分類される可能性はあります。 ストーリー性重視派のため、キャプションが偏執的かと思いますがご容赦願います。

おすすめ