thumbnailthumbnail-0thumbnail-1thumbnail-2thumbnail-3thumbnail-4thumbnail-5thumbnail-6

1 / 7

過去からの暴食

「廃墟の確認~?そんなのお巡りさんか消防さんの仕事でしょ」 冒険者の店で、マスターに仕事を持ち掛けられたチェルキーが不満の声を上げる。 「それがよ。この前の地震であらわになったんだが、どうもただの廃墟じゃないんだ」 とそこで、マスターは声を潜める。 「今の様式に似ているんだが、なんかやけに古いんだ。10年20年っていうもんじゃねえ。そのくせ中の調度は洗練されている」 応じて、チェルキーの声も低くなる。 「迷い人の遺跡ってこと?」 「ああ……。なんか出るかもしれん……」 警察は、対人間(人族)が相手だ。消防はモンスターや魔族も災害として対処することがあるが。 「まだ正体がわからんから大ごとにはできん。調査が必要なんだよ。それで、あれはどうする?」 そういって、新作のケーキを物色しているクマ娘こと、プーにゃんを親指で指す。 「廃墟だか、遺跡だかに食べ物はあるかな~」 「クマ?」 トテトテ近づいてきたプーにゃんを見ながら、チェルキーは呟いた。 「なんか見つけたら、少し食ってもいいぞ?」 ダメ押しにもならないマスターの言葉に。 「いきますか……」 「うーん、やっぱりなんか変なところだね」 廃墟を探索しながらチェルキーはつぶやいた。 現代風であるのにやけに古びている。崩れ落ち草木の神職を受けまくっている。それでいて古臭くない。 チェルキーの賢者の学院で学んだ知識と合わせても、この建物や調度は、最先端もしくはそれ以上の魔動機術を用いないと作れないのではないか。 「でもねえ~」 床に落ちている瓶を拾い上げる。そこに書かれている文字は、確かに自分たちの文字と似ていた。 だが、全く読めない。 「こりゃあ、学園の教授たちじゃないとわからないかな……」 とそのとき、 「チェチェ!!食べ物見つかったクマ!!」 調査もそこそこ、はらぺこプーにゃんは食料をあさりに行ったのだ。 「こんな、微妙な遺跡の食べ物か~」 チェルキーは、首をかしげながら、プーにゃんの元に急ぐのだった。 冒険者の店。 結局、ちょっと変わった少し進んだ魔動機術で作られた遺跡か廃墟かぐらいしかわからなかったのだけど。 「これ、食べて大丈夫かな……」 さびた缶詰や、何か柔らかい金属の袋に入った食料を、目ざとくプーにゃんは見つけたのだ。 開けてみると、確かに食べ物であり、賢者と料理人の目から見て腐敗の兆候はない。 変質はしているかもしれない。 一応食物の匂いは漂っている。かなり強いが。 それがより一層怪しさを倍増させている。 美食の女神からは何のお告げもない。 美味しいかどうかは別。 「この文字は、MCI?1971~?、これは数字だろうね」 辛うじて読み取れるのは、この料理かセットかの名前らしい文字と、数字。 たぶんいつ作られたかを示すのかもしれない。 この国の年号には該当する書式はないが。 料理は、まあ、この国でも金銭に余裕がない人や、食にこだわりがない人は普通に食べるだろう見た目だ。 お世辞にもうつくしくも美味しそうにも見えない。 「チェチェ、どうしたクマ?食べないクマ?」 となりでいぶかし気に座っていたプーにゃんは。 「美味しいクマ!!」 あっという間に、遺跡の怪しい食物を平らげた。。 「ちょ、ちょっと、プーにゃん大丈夫!?」 『美食の探求は 生の探求なり』 今更ながらの神の声がチェルキーの頭の中に響いた。 二日後 「おう、悪食ども。 おめえらの食ったあの飯、学園で調べてもらったらよ。 300年以上は経っているってよ」 二人で蜂蜜タルトを楽しんでいたチェルキーとプーにゃんは、お互い顔を見合わせた。

さかいきしお

コメント (12)

ガボドゲ
2024年04月27日 10時27分
mirusen
2024年04月27日 04時59分
Jutaro009
2024年04月26日 20時12分
よ~みん
2024年04月26日 16時06分
ジャイブル
2024年04月26日 14時39分
ルノハ
2024年04月26日 13時33分
早乙女ショコラ
2024年04月26日 13時20分
寝空
2024年04月26日 13時02分

816

フォロワー

おすすめ

新規コメント

sticker
3時間前
sticker
3時間前
sticker
3時間前
sticker
10時間前
sticker
11時間前
sticker
12時間前
sticker
12時間前
sticker
12時間前