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違う顔

「やっぱり、うちの学校じゃ詳しいことはわからないからなあ」 いかにも、修行中の魔女、と言った風貌の女学生が賢者の学院のキャンパスを歩いている。 魔法女学院の不良女学生、カタリナだ。 「ここの学院生でなくても利用できるのはいいな」 普段の派手なグラデーションカラーのサイドテールとは違い、黒髪に戻して髪を下ろしたその姿は、貞淑でまじめな優等生のようだ。 とっそこに。 「おい、こんな朝っぱらからどこへ連れて行こうっていうんだよ?」 不機嫌そうな声が聞こえてくる。 「もちろん、賢者の学院だぞ。音楽科の授業に出るんだろう?」 「はあ?」 リリスは、学院の制服を着用しているが、潜入するための偽装だ。 「うん?学院長のスレイマンに聞いてみたら、君の学生証を用意してくれたぞ」 ダークエルフが、ハーフエルフの目の前に差し出したのは、確かにリリスの写真が入った学生証だった。 (どっ、どんな手を使いやがった・・・・・・) 「特待生でも休んでばかりじゃ不味い。一緒に行くぞ」 (こっ、この強引さ、あの狐女に似てやがる) リリスは、このごろ気まずくなって、それでいて結局縁が切れていない友人を思い出しながら、心の中で呟く。 「あっ、アーゼリン様。リリスさんですよね・・・・・・」 黒髪の、魔法女学院生が恐る恐る話しかける。 「あっ、あんたは・・・・・・」 盗賊のスキルも高いリリスは、コンサートで自分のソロを聞いて熱烈な賞賛を送ってきたカタリナを覚えていた。 「学院生だったんですね」 「ああ、そうだぞ。私も賢者の修行をしている」 王都一番の吟遊詩人、アーゼリンのとっぴさは、カタリナも噂に聞いて知ってたので、驚く以外のリアクションはないが、 この前ソロで見事な演奏を披露した、リリスまでもが賢者の学院に所属しているとは思わかなかった。 「彼女のフルートは中々見事だしな」 「あっ、えっ、うっうん。まあ・・・・・・」 素人っぽい別の学院の女学生に、正々堂々と偽学生と言うわけにもいかないので曖昧にうなずくリリス。 「今度またフルートを聞かせてくださいね」 屈託なく笑って去っていくカタリナを見ながら。 「じゃあ、いこうか」 毒気を抜かれたリリスは、大人しく王都一の吟遊詩人、アーゼリンの後ろをついていった。

さかいきしお

コメント (8)

Anera
2024年10月21日 10時47分
ぜんざい
2024年10月21日 03時57分
Kinnoya
2024年10月21日 02時21分
杖先なぎ
2024年10月21日 01時10分
Jutaro009
2024年10月20日 23時51分
にしのみつてる@猫変化2021
2024年10月20日 23時21分
CherryBlossom
2024年10月20日 19時40分
JACK
2024年10月20日 18時23分

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