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兵士へのプレゼントは

「気を付け!!」 士官候補生たちが立ち上がり、一斉に礼をする。 「ブロント少尉から、昨夜の襲撃訓練についての講評がある。全員注傾聴!!」 富士見2等軍曹が後ろに下がると、代わって年若い少尉が進みでる。 「士官候補生のみなさん、おはようございます。 諸君は、昨日はぐっすり眠れたようですね」 にこやかに、ふてぶてしい笑みを浮かべるブロント少尉。 昨日雪中野営訓練を行った演習場の近くにある屋内の会議室だ。 「さて、皆さんには朝、可愛くて美人のサンタさんから、プレゼントが届いたと思いますが」 (自分で言うか?メスガキ少尉?) と傍にひかえている富士見二等軍曹以下、士官候補生達も思ったが、口には出さない。 ちなみ士官候補生達の机の上には、朝起きたときに置かれていた小箱が置かれている。 開封されてはいない。そのまま持ってくるように言われていたらしい。 「良かったですね。プレゼントが見れて。鉛玉のプレゼントだったら普通見れませんからね」 野営中のどこかのタイミングで、教官たちによる襲撃が行われることは、周知されていたから、 メスガキ、もとい、ブロント少尉の言う事に反論の余地はない。 なぜ、若年の少尉であるブロント少尉が教官側なのかは疑問の余地があるが。 「野営中は、いつ敵の襲撃があるかわかりません。熟睡してはいけません」 (あんた、吹雪の雪洞の中ですやすや熟睡していたくせに何を言っている?) 富士見二等軍曹は、思わず拳を握り締めたが。 「寝ている最中でも、突発的な何かがあったときに、すぐに起きて臨戦態勢を取れる心がけが必要ですね」 (・・・・・・) ブロント少尉は、富士見軍曹が雪玉を寝顔にくっつけてやろうと、一瞬目をそらした瞬間に、跳ね起きて銃を構えていた。 「右目で起きて周りを警戒し、左の眼で熟睡するのです」 (そんな無茶な!!)と士官候補生ならずとも思うところだろう。 「少尉、個人の素養に大きく依存する指導は、万民向けではないと愚考いたしますが」 さすがに見かねて割って入る富士見軍曹に。 「はい、確かに個人の個性に応じて、柔軟に対処しないといけないですね。今のはあくまで警戒に対する心構えです」 あっさり引っ込めるブロント少尉だったが、それは今回の講義の趣旨ではなかったらしい。 「では、皆さん、サンタさんからのプレゼントに対処してください」 と、士官候補生の机の上に置かれた怪しい小箱を示すブロント少尉。 士官候補生たちは、要領を得ない表情でそれぞれ開封しようとするが。 「気を付けてくださいよ~。鉛玉の代わりのプレゼントですからね。 何が入っているかわかりませんよ~」 脅すように言うブロント少尉の言葉に、士官候補生たちの動きが止まる。 「あら、皆さん、突発事態の対処には不慣れでしょうか。 では、富士見軍曹に、突発的な事態に対する教範を示してもらいましょう。 はい、どうぞ」 と、いきなりどこに置いていたのか、赤いラッピングに包まれた小箱を差し出すブロント少尉。 『カチ、カチ、カチ』 小箱の中から時計の音を聞いた瞬間!! 富士見二等軍曹は、飛び掛かると、ブロント少尉の脳天をぶっ叩いた。 「あっ、あう~、なんで……」 「教官殿と助教は、所用ができた。ブロントサンタからのプレゼントは、各自有効に処分しておくように」 頭を押さえて蹲るブロント少尉を、富士見2等軍曹は尻尾をつかんで引っ張っていき、後には目覚まし時計とケーキが入った小箱が残された。

さかいきしお

コメント (2)

ippei

少尉のプレゼント欲しい

2023年12月25日 14時04分
bonkotu3
2023年12月25日 11時07分

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