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小熊と魔法と人形遣い

「しかし、私たち二人、そろって出てきて良かったのか」 ダークエルフの美女が、そばを歩いているハーフエルフの魔術師に問いかける。 ひなびた宿場町の通りだ。 騎乗兵イザベラが襲撃された件について、情報収集が必要だった。 バードとセージ、情報収集に向いている、女性二人が出てきたのだが。 「イザベラ殿はまだ万全じゃない……。(医術の心得がある者は多いほうが良い……)」 「大丈夫です。お母様。わたしもそれは心配だから。(お兄様はともかく、ブロントはまだ信用できないからね)。留守番を置いてきたわ」 「そうか……。(何かの魔法で急変がわかるのか……)」 少しかみ合っていない会話をしながら、親子は歩いていく。 外出前 「はーい、では、クマちゃん。留守番お願いしますね」 シルビアが、イザベラが寝ている病室で、かわいいクマのぬいぐるみを抱きしめている。 頭をなでなでした後、魔術師の杖を振う。 『ひとがたよ。わが耳目となり、手足となせ』 魔法の光が一瞬ぬいぐるみを包んだと思ったがすぐに消えた。 「これでよし!!」 シルビアは、満足げにうなづくと、ぬいぐるみを椅子の上に座らせた。 「おーい、イザベラちゃん、ゴルドンがケーキ作ったからよ、食おうぜ」 ドアが開いて、軽薄そうな若いエルフが入ってくる。 と、椅子の上に置かれたぬいぐるみが、ぴょんと跳び上がると、床の上に立った。 「おわ!!なんだ!!このぬいぐるみは!!」 そのままゆらーと両手を持ち上げる。 なぜだか、その両手のかぎ爪が血塗られて見える。 ぬいぐるみは、エルフに襲い掛かった 「ちっ、こいつは!!」 エルフは、精神を集中させると、巨大化して食いついてくるクマのぬいぐるみを睨みつける。 果たして、クマのぬいぐるみは、元の大きさに縮んでいく。 血塗られていたかぎづめも、フェルトで作られた白い布に戻る。 それでも、クマのぬいぐるみは、短い手足を振り回して、ぽすぽすとエルフ、ブロントの足を殴りつづけている。 「リモートドールの魔法だな」 後から入ってきたオーク、ゴルドンが、パタパタあばれ続ける人形をつまみ上げる。 「人形に魔力の線をつないで、術者が視界や音を聞くことができて、人形も動かすことができる。簡単な魔法なら、込めておくこともできるらしい」 ゴルドンの妹のシルビアが、イザベラの護衛と見守りのためにかけた魔法に違いなかった。 巨大化した血塗られたクマは、幻覚の魔法だったらしい。 ブロントは見破って打ち消したが。 「そりゃあスゲーね。シィルちゃん、あんなすっとぼけた顔して、本物の魔法使い(ソーサラー)なんだな」 感心したのか、けなしているのか、わからないエルフの物言いに。 「聞こえているわよ……」 椅子の上に座るぬいぐるみから、鈴のなるような少女の声で返事があった。

さかいきしお

コメント (2)

銀の野兎
2023年10月28日 12時40分
bonkotu3
2023年10月27日 12時00分

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