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コタツとコルシとハーフエルフ

「急に雪が降ってくるなんて驚きましたね」 二人の若く見える女性が、雪が降り積もる外の景色を見つめながら、室内の床に座っている。 どうやら、低いテーブルがあって、その上に布団を載せて、下半身を入れられる構造らしい。 「ああ、精霊王フェンリルが錯乱しているのであろう」 村に入ってからすぐ、急激に天候が悪化して、あろうことが雪まで降ってきたのだ。 「さっきまで真夏でしたものね。 服も貸してくれて助かりましたね。」 「ああ。私もこの部族のエルフたちの装束は気に入っている。」 彼女たちが着ている服は、一枚の大きな布を、あまり裁断せずに、 ひもや帯で体に緩やかに固定する、民族衣装だった。 「これは、東方の民族衣装、キモノでしょうか」 シルビアは、セージとしての知識から言った。 「どうも着物とは少し違うな。東方までは行っていない、中間あたりの地域だろう。」 「へえ~。それにしても、この暖房器具は素晴らしいわね。 寝るときでもないのに、こんなふかふかで暖かいなんて~。 幸せ~。お兄様も入ればよいのに。」 彼の兄であるオークの戦士は、こんな時にこそ修行と、剣と内功術の修行に励んでいるが、 ハーフエルフの魔術師こと、シルビアは、だらしない蕩けそうな表情で、机の上に突っ伏している。 「これは、コルシと呼ばれる暖房器具だな。かの地域は冬の寒さが厳しくてな。熱を有効に使うためにこんな形になったのだろう。旅人の誰かがこの村に伝えたと聞いている」 「へえ~、旅人もいいことをしてくれたわね」 普段は、母の知識に何かと反発するシルビアだが、今日は素直に聞き入れる。 それほど、コルシが気に入ったらしい。 「不思議な響きですね、コルシ……。コタツ?あれ、両方聞いたことがあるような」 「いろいろなところで、似たようなものは存在するらしいぞ。旅人がコルシをみると、郷愁に誘われるらしいな」 ダークエルフ、アーゼリンはそこで言葉をきってかすかに笑う。 「もしかして、コルシを伝えたのは、稀人(どこかから迷い込んだ人)かもしれんぞ」 と、そこに、 「客人、長たちの用意が整った。まいられよ」 若いエルフの兵士が、面談に呼びに来た。 「では、参ろう……行くぞ、シルビア」 「うにゃ~」 普段とはうってちがって、だらしない娘を、母がコタツから引っ張り出した。

さかいきしお

コメント (3)

銀の野兎
2023年10月16日 23時16分
ヘロβ
2023年10月15日 23時10分
なかじ
2023年10月15日 01時51分

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パステルカラーかわいすぎる( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆

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