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中華まん「白々(ぱいぱい)」
今日は桃宮ちゃんの学校の学園祭です。私が出掛けようと自室を出て廊下に踏み出すと、廊下で幽魅が額にお札を張り付けて倒れていました。多分玄葉の仕業だな。玄葉は配信のための作業があって忙しくしているはずだから、そこにちょっかいかけて怒らせたんだろう。幽魅は目の焦点が合わず頬を紅潮させ、舌をだらしなく出してびくびく痙攣していたので、不憫に思った私はお札を剥がしてあげました。 「ひゃー、助かったぁ!死ぬかと思ったよぉ!」 「そのネタ何回目なのさ・・・あ、そうだ。幽魅もついてくる?中学校の学園祭」 「あっ、行くっ、行くぅー!」 暇を持て余していたんでしょう、即答でした。そんな訳で幽魅を連れて中学校に行くと、桃宮ちゃんの教室を目指します。 「あー!凪おじさん、你好っ!」 その途中で後ろから女の子にハグされました。この圧倒的な2つの主張は間違いなく桃宮ちゃんです。 「こんにちは、桃宮ちゃん・・・、あ、あれ?」 「んー?凪おじさん、どしたの?」 振り返ってみると、桃宮ちゃんはチャイナドレスに身を包んでいます。和風メイドはどうしたんだろう。 「桃宮ちゃん、和風メイドじゃないんだ?」 「あれねー。喫茶店が多すぎるからってくじ引きで別の店にさせられたの。チルド中華まんのお店になっちゃった」 そう言って桃宮ちゃんがくれたチラシには『中華まん「白々(ぱいぱい)」』と大きく書いてあります。看板娘は桃宮ちゃんです。・・・狙ったな、男子め。この子に2個セットを勧められたら買っちゃうだろ。良い仕事しやがって。店の名前なんてもはやそうとしか思えないし。私の思考が汚れてるわけじゃないよな、これ。 「可愛い子だねー!凪くんの知り合い?」 「(そうだよ。桃宮弥美ちゃんって言うんだ)」 幽魅に小声で声を掛けます。桃宮ちゃんには幽魅は見えてないので独り言言う変なおじさんだと思われたくないですから。 「私もチャイナするー!・・・変ッ、・・・・・・身っ!」 幽魅の服がいつものやつからチャイナドレスに変わりました。髪型もお団子になってます。だんだん変形の自由度が上がってるなぁ。 「どう?可愛いでしょ?」 「(はいはいかわいいかわいい)」 「雑ぅー!」 私が幽魅をあしらっていると、桃宮ちゃんがしきりに胸をさすっているのが目に留まりました。 「桃宮ちゃん、胸どうかしたの?」 「うーん、ちょっとキツくて。食べすぎたかなー」 ま、まだ成長しているというのか。恐ろしい子だ。 「とりあえず、お店に案内してくれる?チラシ見たら食べたくなっちゃった、桃宮ちゃんの中華まん・・・じゃなくて桃宮ちゃんのクラスの中華まん!」 致命的なセクハラ発言するところだった、危ない危ない。桃宮ちゃんはにこっと笑って私の先に立って案内してくれます。幽魅は「フュー・・・ジョン、はっ!」とか言いながら桃宮ちゃんに入り込んで遊んでました。 桃宮ちゃんのクラスで中華まんを2個買うと、隣の空き教室が休憩スペースになっていたのでそこで食べる事にしました。桃宮ちゃんも丁度休憩に入ったらしく、私について来たので中華まんをひとつ分けてあげました。 「おじさんありがとー。これ試食でいくつか食べたけど結構おいしいんだよ」 確かに桃宮ちゃんの言う通り、チルドの割にはいい出来の中華まんです。玄葉にもお土産で買っていってあげようかな。桃宮ちゃんはあっさり中華まんを平らげました。おいしそうに食べるなあ、こっちも幸せな気持ちになります。 「ごちそうさまでした!」 桃宮ちゃんが軽く伸びをします。すると桃宮ちゃんの胸からバリッという音が響き、チャイナドレスの胸がはだけて御開帳 「危にゃあ!?」 するところを、桃宮ちゃんの胸から出てきた指がドレスを押さえて阻止しました。ナイス幽魅! 「ちょ、ちょっときつい!指先だけものに触れる状態にするのきつい!早く代わりに押さえて!」 「えっ」 お、押さえてって言われても・・・いいのか?いやしかし幽魅の指が外れたら今度こそ丸出しになってしまうかも・・・!仕方ない。 「桃宮ちゃん、ちょっとごめん!」 「ひゃ!?」 幽魅の指が押さえていたドレスの端を同じように指先で押さえます。ほよんっとした感触が指先に伝わってきました。気にしないようにしないと、なんて思っていたら幽魅の叫び声が聞こえてきました。 「こらー、凪くん何やってんの!私は弥美ちゃんに押さえてって言ったの!」 あっ、そうだったのか。いやでも桃宮ちゃんには幽魅の声聞こえないんだから私に言ってると思っても仕方ないでしょう。と、とにかく桃宮ちゃんにバトンタッチしなくては。 「桃宮ちゃん、今私が押さえてるところを押さえれば服はだけないと思うから、バックヤードに行って応急処置してもらうとかしてきて。私はここで待っているから。あと胸触っちゃってごめん」 「う、うん、分かった。気にしないで」 桃宮ちゃんは胸元を押さえると自分の教室に駆け足で戻っていきました。残されたのは私と、桃宮ちゃんから分離した幽魅です。 「凪くんのえっち。ドスケベ野郎だなーもう」 幽魅がぷりぷり怒りながら私の足を踏みにじってきます。私は甘んじてそれを受け入れました。 「・・・おっぱいほよんほよんだったねぇ」 「おいこら、幽魅も人の事言えないじゃん」 ●3-B教室内、バックヤードスペース、女子着替えエリア 「ヒマ先輩ごめーん、胸破れちゃったー。直して下さい!」 私はお手伝いに来てくれてたヒマ先輩に声を掛けた。 「もーまたかよぉ!試着の時といい何回胸のところ破るんだよこの爆乳ホルスタイン娘ー!ほらそれ脱いでこっち渡して!こんな事もあろうかとワンサイズ大きいの用意しといたから、その緑色のやつ着てて!」 ヒマ先輩機嫌悪いなあ。なんか胸の話になるといつも怒ってるような?ええと、緑のやつ・・・あった、これこれ。 (ちょっとだけど、凪おじさんにおっぱい触られちゃった・・・なんか胸がドキドキするよぅ。凪おじさんの指、意外としっかりしてて、やっぱり男の人の手だったなー) 「おぉいこらぁ弥美ちゃぁん!何これ見よがしに私の目の前で生乳揉んでんのさ!さっさと仕舞ってくれるかなぁ!?」 あっ、ヒマ先輩がキレた。ついおじさんの手の感触を思い出して揉んじゃってた、失敗失敗。おじさんも待たせてるし、早く着替えて行こう。 「・・・どーしよ、ちゃんと凪おじさんの顔見られるかなー」 耳とほっぺたが中華まんみたいにアツアツだよー、おじさんのところに戻るまでに冷めてほしいなー。