MILFなエルフのエレさん

「エレーニア様！どうか！どうかご武運を！！」 「ありがとう。私に何かあったらその後は頼む」 「さて・・・魔法の効果時間で、もって30分・・・いや20分か・・・」 エレーニア・フォン・ローゼンバーグ。 この世界でのエルフは、その長寿ゆえの特性で、家族ではなく個人が重きを置くため、あまり苗字を持たない。 エレーニアは約100年前の大戦における功績により、この「薔薇の丘に立つ者」という意味を持つ姓を与えられた。 この大戦末期において、敗戦濃厚となった敵国の指導者が、古の封印を解き、悪しき古龍を復活させた。 だがエレーニアは、愛用のホーリーレイピアを携え、たった「一人」で古龍を退けたのである。 大量の血を流し息絶えた竜の躯の上に立つ姿が、まるで薔薇の丘に立つ貴婦人の様に見えた。 これが、彼女の姓名の由来と言われているーーー 「すごい。これを全部エレさんが？」 仕事の帰り道に、エレさんが住むエルフの集落に寄った。 そこには、一面に咲き誇る、薔薇の花壇があった。 「ここに帰ってからは、ずっと薔薇を育てるんですよ。この時期が毎年本当に楽しみで」 カゴ一杯のバラの花束を持ちながら、エレさんがニッコリ笑う 「この時期の贅沢で、バラのお風呂に入ったり、花びらをベッド一面に敷いたりするんです。本当に良い香りで落ち着きますよ」 「よし良かったら、キースさんも・・・ご一緒に・・・」 「それは良いですね。是非」 この薔薇園の片隅に、薔薇の一凛が活けられ、竜の文様が刻まれた小さな石碑がある。石碑には 「人類に翻弄されし古龍。この地が安息の地と成らん事を」と記されていた。