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③~夢見庵~ 心身を癒す温泉宿に連れ去られる女子の話

2024年03月21日 16時26分
使用モデル名:NovelAI
対象年齢:全年齢
スタイル:イラスト

書籍が入った重たい袋を抱えて坂の上の実家に戻ると、そこには黒いスーツの男達がたむろしていた。 「あ、あの…、どちら様ですか?何か御用でも…?」 黒づくめのスーツを着た男性に恐る恐る話しかけると、男は返事の代わりに突然実家の奥へと大声で呼びかけた。 『あ、リョージさん!こちらのお嬢さんがお見えですッ!』 急な大声にビクッと肩をすくめる美咲の元に、やはり黒スーツ姿の男が玄関から我が物顔でやってきた。 『瓜生美咲さんだね。悪いがちょっとお宅の荷物を運び出させてもらってるんだ。…ったく、どこ見てんだ気を付けろっつってんだろ!』 木枠のようなものを運ぼうとしている男達に、驚きで目を見開いた美咲が弾けるように駆けよっていく。 「あなた達、なにしてるんですか?これは大事なものなのに…!」 木製の舞台セットのようにも見えるそれは祖母の代から伝わる〝機織機〟(はたおりき)で、古いけれど大切に手入れされた機器を壁にぶつけそうに粗雑に扱っているのは見るに堪えない。 『貴重なものらしくてね、これも持っていかなきゃならない』 リョージと呼ばれていた男の抑揚のない声が全く頭に入ってこない。 小さい頃、母親があの織機をガタゴトいわせながらきれいな布を織るのを見るのが好きだった…… 脳裏に懐かしい姿がよぎる美咲の前を金庫やら壺といったものが次々と通り過ぎる中、一度は止まった機織り機が再び運ばれようとしている。 「なんなんですか… ねぇ、お父さんは?」 『親父さんは今頃海の上で大きなお魚でも釣ってるんじゃないかな?〝海の底〟じゃないだけマシだろ?…この家と工場は親父さんの借金のカタの一部として差し押さえさせてもらうことになった。お嬢さんは…今日から野宿でもするしかないかもな?』 男の言葉が何一つわからないままに、美咲は反射的に織り機を運ぶ男に駆け寄ってその肩を引き留めた。 「お願いです、待ってください…!母の…、大切な形見なんです」 涙を溜めて訴える美咲の肩を今度はリョージがとりなすようにポンポンとはたいてみせる。 『お嬢さん、俺達は差し押さえに来たんだがな、そもそもこれっぽっち貰ってもまだ全然足りないんだ』 「これっぽっちなら、止めてください!」 さっきまでオロオロとしていた美咲が、男をひたと見据えて強く言い放った言葉にガヤガヤと荷を運んでいた周囲の者どもがシン…と息を呑む音が聞こえてきた。 スーツの袖口から色とりどりの模様を散らしたこの男達が〝生半可ではない〟事はお嬢様育ちの美咲にもわかっている。 「お金が必要なら働きます。何年かかってもお返ししますから、お願いです…」 強い瞳で見据える美咲とリョージは、傍から見ればほとんど睨み合っているかのようだった。 『何年も待ってられねぇんだよ、お嬢さん』 一気に切れ味を増した声に、まばたき一つせず見つめ返している美咲の瞳がわずかに揺れる。 「…………………。」 『一つだけいい方法がある。アンタにしかできない事でな。楽ではないかも知れないが、家も残せて親父さんも早めに帰って来れるかも知れない。俺達がアンタみたいな若いお嬢さんを連れていくということは相応の覚悟をしてもらわないといけないが……どうだ?俺と来るか?』 無言で唇を噛みしめる美咲に介することなく懐から一枚の名刺を取り出した男は、美咲の春らしい淡い色のニットの胸元にチップでもやるようにスッと差し入れた。 「……!?」 ビクっと後ずさる美咲が小さな紙片を抜き取ると、そこにはごくシンプルに二行だけ文字が書かれている。  〝 四条會 若頭 〟    〝 久 住 凌 爾 〟 「シジョウカイ…、クズミ…リョウジ?」 『確かに俺はクズみてぇな男だが、クズミじゃなくて〝クスミ〟だ。アンタの気概に免じて一晩返事を待ってやろう。明日もう一度来る。お前等、その機械は中に戻しておけ。ぶつけるんじゃねぇぞ』 呆然とする美咲を背に、久住凌爾は坂道に待たせた黒塗りの車へフラリと下っていった。

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「小説×AI×手描き」で活動中の ー iroha ー いろはです♡ イラストとサクっと読めるお話の組み合わせもお楽しみ頂けたら嬉しいです♡ サムネイルのお仕事や個人依頼もお受けしておりますのでお気軽にお声掛け下さいませ♡

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